サッカー史に名を刻む「カフー」は、ブラジルが誇る最高の右サイドバックであり、その圧倒的な運動量と安定したプレースタイルで世界中のファンを魅了した。彼のキャリアは、ブラジル代表としての輝かしい実績、数々のクラブでの成功、そして個人としての凄さが際立っている。
サンパウロFCでのプロデビューを経て、ローマやACミランといったヨーロッパの強豪クラブで活躍。特に、ローマでのセリエA制覇やミランでのUEFAチャンピオンズリーグ優勝は、彼の全盛期を象徴するタイトルとなった。また、ミランの背番号は何番だったのか、そして彼の異名「イル・ペンドリーノ」の由来にも注目したい。
一方で、カフーはいつ引退したのか、現在は何をしているのかという点も気になるところだ。さらに、ロベカル（ロベルト・カルロス）と比較されることの多い彼のプレースタイルやポジションの違いにも迫る。
また、ブラジル代表のキャプテンとして4度のワールドカップに出場し、2度の優勝を経験したカフーの代表での実績は圧巻だ。横浜F・マリノスへの移籍が破談し、最終的にミランへ移った背景、そして彼の息子にまつわる悲劇など、彼の人生にはサッカー以外のエピソードも多い。
この記事では「カフー」というブラジルのレジェンドが歩んだ軌跡を振り返り、そのプレースタイル、クラブと代表での実績、全盛期の輝き、そして現在に至るまでを詳しく解説する。
カフー ブラジルの最高SBの軌跡と活躍
- カフーのプレースタイルとポジション変更
- カフーのクラブキャリアと成績
- ブラジル代表での実績と記録
- カフーの異名「イル・ペンドリーノ」とは？
- カフーの全盛期はいつだったのか？
- ミラン時代のカフーの背番号とは？
カフーのプレースタイルとポジション変更
カフーは、攻撃的な右サイドバックとして長年にわたり世界のトップレベルで活躍した。彼のプレースタイルの最大の特徴は、驚異的な運動量と攻守のバランスの取れたプレーにある。
もともと攻撃的な選手としてキャリアをスタートさせたが、サンパウロFC時代に右サイドバックへとコンバートされた。このポジション変更が功を奏し、彼は守備の安定感を持ちながらも、オーバーラップを繰り返して攻撃に貢献できる選手へと成長した。特に、スピードを生かした上下動と正確なポジショニングが際立っていた。
また、カフーは単なるディフェンダーではなく、攻撃の起点としても機能した。ボールコントロールが巧みで、パスの選択肢が豊富だったため、相手守備陣を崩す役割を果たした。ただし、クロスの精度に関しては一定の評価を受けつつも、決定的な場面での精度には課題があると言われることもあった。
守備面では、抜群の予測力とカバーリング能力を発揮し、単純な1対1の強さよりも、ポジショニングやインターセプトで相手の攻撃を防ぐプレースタイルだった。そのため、派手な守備は少なかったが、試合を通して安定感のあるプレーを見せた。
結果として、カフーは右サイドバックというポジションの概念を広げ、攻撃と守備の両方で貢献できる選手として、後のサイドバック像に大きな影響を与えた存在と言える。
カフーのクラブキャリアと成績
カフーのクラブキャリアは、サンパウロFCから始まり、ブラジル国内やヨーロッパのクラブで数々のタイトルを獲得しながら成功を収めた。特に、イタリア・セリエAでの活躍が際立っており、ローマとミランでその名を世界に刻んだ。
プロデビューを果たしたのはサンパウロFCで、ここでは1992年と1993年のコパ・リベルタドーレス連覇に貢献。その後、スペインのサラゴサへ移籍したが、わずか1年で退団し、再びブラジルへ戻ることになった。その後、パルメイラスでプレーし、国内での経験を積んだ。
ヨーロッパでのキャリアが本格化したのは、1997年にローマへ移籍してからだ。ローマでは右サイドのレギュラーとして活躍し、2000-01シーズンにはクラブの18年ぶりのセリエA優勝（スクデット）に貢献した。この時のプレーぶりは、ローマのファンから「右サイドの支配者」と称賛されるほどだった。
2003年にはローマを離れ、当初は横浜F・マリノスへ移籍する予定だったが、最終的にはACミランへ加入。ミランでは、スクデット（2003-04シーズン）、UEFAチャンピオンズリーグ（2006-07シーズン）など、多くのタイトルを獲得した。また、2007年のクラブワールドカップでも優勝を経験し、キャリアの集大成となった。
通算成績としては、クラブでの公式戦559試合に出場し、44ゴールを記録。ディフェンダーとしては異例の攻撃力を示した。特に、イタリアでの活躍が評価され、セリエA史に残る名サイドバックとして語り継がれている。
ブラジル代表での実績と記録
カフーは、ブラジル代表として長年にわたり活躍し、歴代最多キャップ数を誇る選手の一人である。彼の代表キャリアは1990年に始まり、2006年まで続いた。出場試合数は143試合に達し、ブラジル代表の歴史に名を刻んでいる。
ワールドカップには1994年、1998年、2002年、2006年の4大会に出場。そのうち、1994年と2002年の2回、ブラジルを世界王者へと導いた。1994年大会ではジョルジーニョの負傷により決勝で途中出場し、優勝を経験。1998年大会では決勝戦まで進出したものの、フランスに敗れ準優勝に終わった。
カフーのキャリアのハイライトとなったのは、2002年の日韓ワールドカップだ。この大会ではキャプテンとしてチームを率い、全試合に出場。特に、決勝戦ではドイツ相手に安定したプレーを見せ、ブラジルの5度目のワールドカップ優勝に大きく貢献した。試合後、優勝トロフィーを掲げた姿は、サッカーファンの記憶に残る名場面となっている。
2006年のドイツ大会では、再びキャプテンとしてチームを率いたが、準々決勝でフランスに敗れた。この試合を最後に、代表としてのキャリアに幕を閉じた。
また、カフーはコパ・アメリカでも活躍し、1997年と1999年に優勝を経験。ブラジル代表として数々のタイトルを獲得し、長年にわたってチームの柱としてプレーし続けた。
こうしてカフーは、ブラジル代表において歴代最多出場の記録を持つ選手となり、右サイドバックの最高峰として世界中のサッカーファンに認められる存在となった。
カフーの異名「イル・ペンドリーノ」とは？
カフーは、イタリア・セリエAでプレーしていた頃、「イル・ペンドリーノ（il Pendolino）」という異名で知られていた。「ペンドリーノ」とは、イタリアで運行されている高速鉄道の名称であり、カフーのプレースタイルを象徴する言葉として定着した。
この異名が付いた背景には、彼の驚異的なスタミナとスピードがある。カフーは試合の開始から終了まで、まるで列車のように止まることなく右サイドを駆け上がり、攻守に貢献していた。特に、オーバーラップの頻度と戻りの速さは他の選手とは一線を画しており、90分間通してその勢いが衰えることはほとんどなかった。
また、この異名には、単に速さだけでなく、彼の正確なプレーも関係している。ペンドリーノは高速でありながら安定した運行をする列車であり、カフーのプレースタイルもそれと同様に、スピードだけでなくポジショニングや戦術理解の高さによって、チームに欠かせない選手であったことを示している。
結果として、「イル・ペンドリーノ」という異名は、カフーのプレースタイルを的確に表す言葉となり、イタリアのファンの間で広く親しまれた。彼のプレーを見た人々は、この名前にふさわしい選手であることをすぐに理解できたはずだ。
カフーの全盛期はいつだったのか？
カフーの全盛期は、1997年から2004年にかけての約7年間と考えられる。この期間、彼はクラブでも代表でも中心選手としてプレーし、数々のタイトルを獲得した。
まず、クラブレベルでは、1997年にASローマへ移籍した後、2000-01シーズンにセリエA優勝を果たした。これはローマにとって18年ぶりのスクデットであり、カフーの右サイドでの貢献が大きかった。また、攻守のバランスを取りながら、チームに不可欠な存在となり、イタリアのファンからも絶大な支持を受けた。
次に、2002年の日韓ワールドカップでは、ブラジル代表のキャプテンとしてチームを優勝に導いた。この大会では全試合にフル出場し、持ち前の運動量とリーダーシップを発揮。決勝戦ではドイツを相手に安定したプレーを見せ、試合後には優勝トロフィーを掲げた。これは、彼のキャリアの中でも最も象徴的な瞬間の一つだ。
さらに、2003年にはACミランへ移籍し、翌2003-04シーズンに再びセリエAを制覇。その後もUEFAチャンピオンズリーグ（2006-07シーズン）やクラブワールドカップ（2007年）など、世界最高峰のタイトルを獲得した。
このように、1997年から2004年にかけては、カフーが攻守ともにピークのパフォーマンスを発揮し、世界最高の右サイドバックとして評価された時期である。年齢を重ねても一定のレベルを維持していたが、この期間が彼のキャリアの頂点と言えるだろう。
ミラン時代のカフーの背番号とは？
カフーは2003年にACミランへ移籍し、2008年に引退するまでの5年間をこのクラブで過ごした。この間、彼が着用していた背番号は「2」だった。
この番号は、彼がプレーしていたポジションである右サイドバックを象徴する番号の一つであり、ディフェンダーの中でも特に攻撃的な役割を担う選手に与えられることが多い。カフー自身も以前からこの番号を着用しており、代表チームでも同じ背番号を背負っていたことがある。
ミランでは、彼の運動量と安定した守備力が評価され、移籍初年度からレギュラーとして活躍。加入直後の2003-04シーズンにセリエA優勝を経験し、その後もUEFAチャンピオンズリーグ優勝（2006-07シーズン）やFIFAクラブワールドカップ制覇（2007年）に貢献した。背番号2を背負ったカフーは、ミランの右サイドを支え続け、チームに欠かせない存在となった。
また、カフーはミランでプレーした5年間のうち、4シーズンにわたって公式戦20試合以上に出場し、ベテランながらも安定したパフォーマンスを見せ続けた。特に、試合終盤でも衰えないスタミナは、当時のサッカーファンからも驚きの目で見られていた。
結果として、カフーの背番号2は、ミランの歴史においても重要な存在となり、彼がいかに信頼されていたかを示す象徴的な番号となった。
カフー ブラジル代表キャプテンの現在
- ロベカルと比較されるカフーの凄さ
- カフーはいつ引退したのか？
- 横浜F・マリノス移籍が破談した理由
- 現在のカフーは何をしているのか？
- 息子の悲劇とカフーの思い
ロベカルと比較されるカフーの凄さ
カフーは同じブラジル代表のロベルト・カルロス（通称ロベカル）とよく比較されるが、プレースタイルや役割には大きな違いがある。ロベカルは左サイドバックとして強烈なキック力と攻撃性能を武器にし、攻撃的なSBの象徴とされた。一方、カフーは右サイドバックとして、圧倒的なスタミナと試合を通じた安定感を強みとしていた。
カフーの最大の強みは、試合中に何度も上下動を繰り返せる持久力と、そのプレーが最後まで衰えない点だ。攻撃だけでなく守備面でも優れたポジショニングを取り、1対1の対応やインターセプトで貢献した。また、戦術理解度が高く、試合の流れを読みながら適切なタイミングで攻撃参加をする判断力にも優れていた。
一方で、ロベカルは圧倒的なフィジカルとシュート力を武器にしており、特にFKでは数々の伝説的なゴールを決めた。攻撃面でのインパクトはロベカルのほうが上だったが、守備に関してはカフーのほうが堅実だった。特に、カフーは組織的な守備を重視し、無駄なリスクを冒さないプレーが特徴的だった。
このように、ロベカルが爆発的な攻撃力を誇る一方で、カフーは試合を通じて安定したプレーを提供できる選手だった。それぞれ異なる強みを持ちながらも、どちらもブラジル代表を支えた名選手であることに変わりはない。
カフーはいつ引退したのか？
カフーは2008年にACミランを退団し、そのまま現役を引退した。最後の試合は2008年5月18日に行われたセリエAのウディネーゼ戦で、この試合で彼は1ゴールを決めて有終の美を飾った。
引退を決断した理由にはいくつかの要因がある。年齢的な衰えが見え始めていたことに加え、長年戦い続けたヨーロッパのトップリーグで十分な実績を残したという達成感があった。また、家族との時間を大切にしたいという思いも強かったとされている。
カフーは引退後、指導者の道には進まず、実業家として活動を開始した。妻とともにスポーツ代理店を経営し、若手選手のサポートなどに力を入れている。また、サッカー界のイベントや解説などにも関わることがあり、現在もサッカー界と関係を持ち続けている。
こうして、カフーは18年間のプロキャリアを終え、ピッチを去った。しかし、そのプレースタイルや実績は、今もなお多くのサッカーファンに語り継がれている。
横浜F・マリノス移籍が破談した理由
カフーは2003年にASローマを退団する際、当初はJリーグの横浜F・マリノスに移籍する予定だった。しかし、契約間近で状況が一変し、最終的にはACミランへの移籍を選んだ。この移籍破談の背景には、いくつかの事情があった。
まず、ミランからのオファーが急遽届いたことが大きな要因だった。当時、カフーは32歳で、ヨーロッパのビッグクラブからのオファーが来るとは予想していなかった。しかし、元ブラジル代表のレオナルドを通じてミランの関心を知り、アンチェロッティ監督の強い希望もあって移籍を決断した。
また、ミラン側のオファーは横浜F・マリノスよりも条件が良いものではなかったものの、セリエAという高いレベルでのプレーを継続できる点がカフーにとって魅力的だった。彼は自身のキャリアをさらに続けることを重視し、日本ではなくミランを選んだ。
この決定により、横浜F・マリノスはすでに支払った契約金の問題に直面した。カフー側は違約金を支払う形で契約を解除し、最終的にミランへと移籍した。この件に関して、横浜F・マリノス側は怒りを示したとされているが、結果的にカフーはミランで再びタイトルを獲得し、その決断が間違いではなかったことを証明した。
このように、横浜F・マリノス移籍破談の背景には、ミランからのオファーという予想外の展開があったことが大きな要因となっている。もし当初の計画通りにJリーグへ移籍していたら、日本のサッカー界にとっても大きな話題となっていただろう。
現在のカフーは何をしているのか？
カフーは2008年に現役を引退した後、サッカー界に直接関与する指導者の道には進まず、主に実業家として活動している。特に、スポーツマネジメントの分野で積極的に動いており、選手の代理人業や企業とのコンサルティングを手がけるスポーツ関連のビジネスを展開している。
また、慈善活動にも力を入れており、ブラジル国内外で若手選手の育成や恵まれない環境の子どもたちを支援するプロジェクトに関与している。特に、自身が育った環境を振り返り、貧しい地域の子どもたちに夢を与える活動を重要視している。
さらに、FIFAやUEFAのイベントにも頻繁に招かれており、サッカーの普及や大使的な役割を担うことも多い。2022年のカタールW杯では、公式アンバサダーとして大会を盛り上げる役割を果たした。
メディアにも登場することがあり、解説者としてサッカー番組やイベントでコメントをする機会もある。現在もサッカーへの情熱を持ち続けながら、現役時代とは異なる形でサッカー界に貢献していると言える。
息子の悲劇とカフーの思い
カフーの人生には、サッカーでの成功とは対照的な深い悲しみも存在する。2019年9月、カフーの息子であるダニーロ・フェリペ・デ・モラエスが、30歳の若さで亡くなった。原因は心臓発作であり、家族や友人とサッカーをしていた最中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人となった。
ダニーロはもともと心疾患を抱えており、手術を受ける予定があった。しかし、突然の発作は誰も予測できるものではなく、カフー自身も息子を病院に搬送したものの、救うことはできなかった。この出来事は、彼にとって計り知れない悲しみとなり、その後の人生に大きな影響を与えた。
この悲劇の後、カフーは自身の経験を活かし、心臓病の予防や医療支援の重要性を伝える活動に積極的に関わるようになった。特に、スポーツをする若者たちに対し、健康診断の必要性を訴え、心臓疾患を未然に防ぐための啓発活動に取り組んでいる。
また、彼は「息子の死は決して忘れることができないが、彼の人生を讃えるためにも、自分は前を向いて生き続ける」と語っている。サッカー界のレジェンドとしてだけでなく、一人の父親としての彼の姿勢が、多くの人々に共感と尊敬を与えている。
カフー ブラジルの伝説的な右サイドバックの軌跡
この記事のポイントをまとめよう。
- 圧倒的な運動量とバランスの取れたプレースタイルを持つ
- 攻撃的な選手から右サイドバックへ転向し成功
- 守備ではポジショニングとカバーリング能力に優れる
- サンパウロFCでプロデビューし、リベルタドーレス連覇を達成
- ヨーロッパではローマとミランで大きな成功を収める
- ローマでは2000-01シーズンにセリエA優勝に貢献
- ミランでは2003-04シーズンのセリエA制覇やCL優勝を経験
- ブラジル代表歴代最多キャップ数を持つ選手
- 1994年と2002年のワールドカップで優勝を果たす
- 日韓ワールドカップではキャプテンとして全試合フル出場
- イタリアでは「イル・ペンドリーノ（特急列車）」の異名で親しまれる
- ロベルト・カルロスと比較されるが、安定感と戦術理解に優れる
- 2008年に現役を引退し、スポーツマネジメントで活動
- 横浜F・マリノス移籍が破談し、ACミランへ加入
- 息子の死をきっかけに健康診断の重要性を啓発する活動を行う